【ITインフラ担当者向けコラム】止めないITを目指す!――IT-BCP(IT事業継続計画)のはじめ方
2025年10月03日
Contents
IT-BCP(IT事業継続計画)とは何か?
IT-BCP(IT Business Continuity Plan)とは、災害やシステム障害などの緊急事態が発生した際に、企業のITサービスや業務システムをできるだけ早く復旧させ、事業を継続するための計画です。
中小企業にとって、IT-BCPは「万が一」に備えるための重要な取り組みです。大企業と比べてIT部門の人員や予算が限られている中小企業では、ひとたびシステムが止まると、業務全体が停止し、顧客対応や売上に大きな影響が出る可能性があります。
たとえば、地震や台風などの自然災害でサーバーが停止した場合、復旧が遅れれば取引先との信頼にも関わります。また、近年増えているランサムウェアなどのサイバー攻撃では、業務データが暗号化され、業務が完全に止まってしまうこともあります。
さらに、担当者の急な退職や病気といった人的リスクも見逃せません。IT-BCPは、こうしたさまざまなリスクに備え、事業を止めないための「保険」として機能します。
今回のコラムでは、「止めないIT」をテーマに、中小企業でも実践できるIT-BCPの考え方と具体的な取り組みをご紹介します。
IT-BCP(IT事業継続計画)の基本構成
IT-BCP(IT事業継続計画)を効果的に機能させるには、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
特に中小企業では、限られたリソースの中で「止めないIT」を実現することが重要です。
リスクの洗い出し
まずは、自社にとってどんなリスクがあるかを整理します。地震や台風などの自然災害、システム障害、サイバー攻撃、そして担当者の退職や病気などの人的トラブルも対象です。
「何が起きたら業務が止まるか?」を具体的に考えることで、現実的な対策が見えてきます。過去のトラブル事例や社内ヒアリングを活用すると効果的です。
重要業務の特定と優先順位付け
すべての業務を同時に復旧するのは難しいため、まずは「止まると困る業務」を明確にし、優先順位をつけます。たとえば、受発注や顧客対応など、業務への影響が大きいものを中心に整理します。
業務ごとの影響度と復旧の難易度を比較することで、限られたリソースでも効率的な復旧が可能になります。
復旧目標(RTO/RPO)の設定
RTOは「どれくらいの時間で復旧すべきか」、RPOは「どこまでのデータを復元できればよいか」を示します。
たとえば「2時間以内に復旧」「前日分までのデータ復元」など、業務ごとに目標を設定することで、必要なバックアップや復旧手段が明確になります。
バックアップと代替手段の準備
バックアップはBCPの基本です。クラウドや外部ストレージなど、社外にも安全なコピーを持つことで、災害時にも対応できます。
また、オンプレミスが使えない場合に備えて、クラウドサービスやリモートアクセスなどの代替手段を整えておくと、業務の継続性が高まります。
訓練と見直し
計画は作っただけでは不十分です。定期的に訓練やテストを行い、実際に復旧できるかを確認しましょう。
また、IT環境や業務内容は変化するため、年に1回程度の見直しを行い、計画を最新の状態に保つことが重要です。
中小企業でもできるIT-BCP(IT事業継続計画)
「BCPは大企業のもの」と思われがちですが、中小企業でもできることはたくさんあります。以下のような取り組みから始めてみましょう。
クラウドの活用
オンプレミスのサーバーに依存せず、クラウドサービスを活用することで、災害や障害が発生しても業務を継続できる環境を整えることができます。Microsoft 365やGoogle Workspaceなどは、メールやファイル共有、スケジュール管理などをクラウド上で一元化できるため、テレワークや緊急時の対応にも強みがあります。初期導入のハードルも低く、BCP対策として非常に有効です。
簡易なバックアップの導入
高価な専用システムがなくても、USBメモリやNAS(ネットワーク接続ストレージ)、クラウドストレージを活用すれば、日常的なバックアップは十分に可能です。特に、バックアップの自動化を取り入れることで、担当者の手間を減らし、バックアップ漏れのリスクも軽減できます。重要なのは「定期的に・確実に・複数箇所に」保存することです。
マニュアルの整備
IT担当者が不在のときでも、誰かが対応できるように、障害対応や復旧手順をマニュアル化しておくことが重要です。手順は専門用語を避け、誰が読んでも理解できるように書くのがポイントです。紙ベースでも構いませんが、クラウド上に保存しておけば、災害時にもアクセスしやすくなります。定期的な見直しも忘れずに行いましょう。
外部ベンダーとの連携
障害が発生した際にすぐに連絡・対応できるよう、保守契約やサポート窓口の情報を整理しておくことが大切です。連絡先や契約内容を一覧にしておくと、緊急時の混乱を防げます。中小企業では社内で対応しきれないケースも多いため、信頼できる外部パートナーと連携しておくことで、復旧スピードと安心感が大きく向上します。
「止めないIT」は、特別な技術や高額な投資がなくても、日々の備えと工夫で実現できます。
まとめ ~ “もしも”は突然に、でも備えは今日から ~
IT-BCP(IT事業継続計画)は、企業のIT環境が「もしも」の事態に直面したとき、業務を止めずに継続するための命綱です。特に中小企業では、ひとつの障害が経営に直結することもあるため、事前の備えが非常に重要です。
「IT-BCPは難しそう」「うちにはそんな余裕はない」と感じるかもしれませんが、実際には、できることから少しずつ始めるだけでも、大きなリスクを回避することができます。たとえば、バックアップの見直しや、復旧手順のマニュアル化など、今日からでも取り組めることはたくさんあります。
まずは、「自社のITが止まったら、何が困るのか?」「どの業務が最も影響を受けるのか?」を考えることから始めましょう。その問いが、IT-BCPの第一歩となり、「止めないIT」への道を開いてくれます。
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